就職
就職活動(しゅうしょくかつどう)は、職業に就くための活動の総称。略して、就活(しゅうかつ)とも呼ばれる。
通常、学生・失業者など職に就いていないか、フリーターなど非正規雇用の者が、企業や官公庁などに正規雇用されるための活動を指す。通常、転職のためや、自営業を始めるための活動は含めない。
以下では特に断り書きがない限り、日本での事例について述べる。
概要
就職活動は、大きく分けて、新卒時と既卒時とに分かれる。区分は以下のとおり。
新卒時
中学校~大学の卒業・修了見込者が行う。大学院も同様に扱われる。
既卒時
学校を卒業後、就業していない者が行う。これを就職浪人という。職歴のある転職希望者が対象の中途採用も含まれる。また、特に卒業後3年以内の人(原則として社会保険が付いた仕事に就く夢がかなわずに就職浪人となり、現在も求職中の人のことを指すが、既に就職していながらキャリアアップや職種のミスマッチなどからの不本意就職だったために希望職種を求めて就職活動する人や、新卒で就職したが試用期間での不採用や職種のミスマッチによりすぐ退職した人なども含まれる場合があり)を、第二新卒者と言う場合もある。
雇用形態として、かつて(戦後~1980年代まで)ほどではないものの、新卒で入った勤め先に定年まで勤める「終身雇用制」が根強く、転職時にも職歴が重視されるので、新卒での就職活動および勤め先は、その後の人生に大きく影響する。
多くの場合、就職するためには筆記、面接などからなる採用試験に合格する必要がある。そのため、受験対策や面接対策などのノウハウも生まれ、受験技術は高度化している。そのような流れを受け、小手先の受験技術ではなく、コンピテンシーモデルなどによる人物評価や(家族・親戚を含めた)身辺調査によって採用しようという動きも盛んになってきている。もっとも、縁故採用や学歴差別、あるいは社内の学閥(大学名差別)が考慮される場合もある。
なお、弁護士、医師、看護師、各種プロスポーツ選手など、その職に就くのに特別な手段や特殊な資格・能力が求められる専門職がある。それらの専門職については、各職業の記事を参照のこと。
就職活動の時期
1990年代頃までは、ほとんどの企業が同じ時期に集中して採用活動を行っていた。1990年代半ば以降は、通年採用を行う企業が増え、その結果として、就職活動は長期化する傾向にある。
就職活動開始時期は早期化の傾向にある。事務型就職を志望する大学生では、遅くとも3年生の秋ごろから就職活動をスタートし、最低でも半年から1年程度行うのが通常である。近年では理工系の学生の就職活動の期間も早期化、長期化の傾向が見られる。
諸外国では日本のような新卒一括採用制度ではない国がほとんどであり、在学中に就職活動を行ったり、特定の時期に大学生が一斉に就職活動を行うといった光景は見られない。
公務員への就職
国家公務員・地方公務員ともに、採用は原則として競争試験による。試験制度や採用までの流れについては、国家公務員の採用試験・地方公務員の採用試験を参照のこと。
公務員への就職を希望する場合、一次の筆記試験が専門的で難しいので、民間への就職活動とは異なり、筆記試験に向けた勉強が就職活動の中心になる。自治体や試験区分によっては二次試験でさらに高度な筆記試験を課すところもある。そのため、早い学生は1、2年次から試験の予備校に通い、試験勉強を始める者もいる。採用先によっても違うが、高校レベルの一般教養に加えて法律や経済学なども含めたものが「教養問題」として出題され、このほかにそれぞれの職種ごとの「専門問題」が出題される。教養試験では、判断推理、数的推理や文章読解などの知能試験も課せられている。地方公共団体によっては、身体障害者の採用枠を設けているところもある。初級(3種)程度の試験を実施する場合が多い。
一時期は1990年代のバブル経済崩壊後の大不況の影響で民間企業への採用がなかなか叶わず、公務員一本に絞る受験生も多かったため、一般職や事務職を中心に100倍近い倍率になる職種も多かった。しかし、大不況が続く中、財政難の影響から年度によっては採用を行わない自治体が増えていること、2001年から文部科学省が公務員浪人を新卒就職希望者から外しても良いという通達が出され[1]、公務員浪人をニート扱いする企業が増えるようになった状況などから、民間との掛け持ち、または完全に民間だけに絞る受験者も増加し、受験者数そのものが減少している。
民間企業への就職
中学生の就職活動
日本では、法律により「満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない」[2]とされており、小学校と中学校の進級制度が年齢主義に基づく例が多いので、その期日と中学校の最終学年終了日が同じ日である例が多い。このため、一般的には中学校卒業直前が就職活動の最初の機会となる。
終戦時からオイルショックまで、新規就業者の中で中卒者は大きなウエイトを占めた。安価な製品を大量生産していた高度成長期には、低賃金で長期間働き、技術を習得してくれる中卒者は、企業にとって「金の卵」と呼ばれる貴重な戦力だった。
中卒者を送り出す側の事情として、特に1970年頃までの地方では、生計が苦しく高等学校などに進学させる余裕がない世帯が多かったので、子供が都会の企業に就職することで経済的にも確実に自立することを期待して、都市部の企業に積極的に就職させようとする考えがあった。こうした状況の下、中学校も企業の求人を生徒に斡旋して集団就職させていた。1953年には、借り切った列車に中学校を卒業して企業に就職する少年少女たちを乗せ、都会に向けて走る「集団就職列車」が青森県で初めて走った。就職列車は1974年まで東北地方を中心に走り続け、高度成長期の春を象徴する風物詩となった。
その後、オイルショック以降、経済の低迷などから企業が大量採用を見合わせるようになった。また、高校進学率が95%を超え、新規就業者の高学歴化が進む現在では、新規就業者に占める中学校新卒者の割合は非常に低く、就職活動は厳しい状況にある。
一方で、仕事の成否が個人の技量に大きく依存し、学歴には関係しない職種(一般に職人と呼ばれるもの、特に伝統工芸や料理人、伝統芸能など)においては、なるべく若いうちから現場で経験を積むために、中卒後すぐに仕事を始める人もいる。
高校生の就職活動
高校生は、現在も大学生と並び新規就業者の主力を占める。就職を希望する高校生は9月16日の就職選考解禁日から、一斉に会社を訪問して入社試験を受け、筆記、面接など数週間の選考の後に内定を得る。後述の大学生の就職活動と異なり、中学生や高校生の新卒求人については、職業安定法に基づき、すべて公共職業安定所(ハローワーク)を通して学校に掲示することが義務付けられている(中学生や高校生は未成年であり、無秩序な就職活動で学業が混乱するのを抑制する観点からの規定)。したがって、実際の応募については学校を経由して企業とコンタクトを取ることになる。また、就職試験を受けるためには学校での書類選考を受けなければならず、しかも成績や普段の生活状況などを加味した上で、抽選により受験者を決定する。不採用になったら再び別な企業に挑戦し、学校での書類選考を受けることになる。かつては後述する「一人一社制」が鉄則だったため、選考結果が出るまでは他の企業を受けられなかった。その影響から、就業意欲があってもなかなか内定を取れない生徒も多かったという。
1990年頃までは就職率が5割を越え、商業や工業などの職業(専門)学科の卒業生はその学歴を生かせる現業職として、商業高校卒なら事務職、営業職などの事務専門職、工業高校卒なら工場などの技能職といったように、職業学科で学んだ内容を反映した現業職の正社員に就くのが普通だった。
しかし、バブル崩壊後、企業の採用抑制で、それまで総合職として就職していた大学生が現業職に就職するようになったり、現業職自体が採用抑制された結果、全体の内定率が就職希望者の半分という県も出るなど、高卒者の就職は著しく厳しいものになった(2004年11月末時点の高校卒業予定者の全国平均内定率は67.7%)。また、職業(専門)学科ですら、以前ならば中卒者が担当していた単純労働職に就く者も多くなり、就職先で学校で学んだことが生かせない単純作業などが多いことから離職しやすい傾向にある[3]。
こうしたことから各都道府県は、長年の慣行としていた学校が抽選で受験企業を一社に絞って受けさせる「一人一社制」を改め、複数受験が可能となった。企業も多くの生徒から選ぶことができるし、生徒も自分の意思で就職先を決められる利点があるが、採用数自体が少ないこともあり、必ずしも採用増にはつながっていない。
ただし、期間限定ながら「一人一社制」を継続する地域もあるし、地域内の企業が同一日に一斉に入社試験を実施するところもある。そのため、進路指導において生徒の希望を把握する場合、業種より「どの企業に就職したいか」という形で生徒に希望を出させる高校も見られるようになった。ただ、採用数自体が少ない現状から、就職したい企業に就職できる状態とも言えない。
大学生の就職活動
大学生の就職活動は、規模が大きく、就職活動を代表する存在である。高専生、短大生、大学院生、専門学校生、各種学校生の就職活動は、大学生の就職活動とほぼ同様である。
就職協定の廃止で、一人の学生が好きなだけ企業を受けることが可能になり、メガバンクや大手メーカー、総合商社、航空会社など大手企業への採用希望者は採用枠の数百倍に及び、就職活動は大変な競争になっている。
多くの企業では一次試験でSPIなど中学・高校レベルの基礎的な学力検査を課し、二次試験以降で面接を行うのが一般的である。面接は複数回行われ、最終面接では役員が出席することも多い。近年は、従来の選考方法に加え、適性診断やグループディスカッション、グループワークなどなど独自の方式で学生の可否を見極めようとする企業も増えている。かつては大手・中小企業問わず、企業への応募の際に出身大学指定の履歴書(まれに市販の履歴書)を提出していたが、最近では大手企業を中心に独自のエントリーシートを使用する企業が多い。エントリーシートには、住所・氏名、志望動機などの基本情報のほか、小論文や質問、中には絵を描かせるものもある。エントリーシートの出来自体を書類審査として一次試験に課すことも少なくない。もっとも、中小企業では現在でも履歴書の提出を求める企業が多い。
比較的多くの学生が、3年次の秋や初冬には就職セミナーを受けるなどして、就職活動の準備に入る。11月になると経団連に属さない企業が面接などの採用試験を開始する。2、3月には経団連の紳士協定に沿う多くの大手企業も会社説明会を開始し、4月1日から一斉に採用試験が開始される。ゴールデンウィーク前後には、最初の内定者がほぼ出揃う。5月以降は地方、中小企業や、大手企業の二次募集が行われる。9月には留学生向けや公務員試験不合格組や内定辞退者の補充を目的とした採用が行われ、10月1日に多くの企業で内定式が行われ、学生の就職活動はほぼ終わる。
研究・開発職への就職
研究職や開発職の場合、メーカーを初めと各種業界が大学院の専攻に対して、修了予定者の総合職の推薦を依頼し、その推薦枠に対して学生が応募する、学校推薦による就職活動が大勢を占めている。また、学校推薦とは別に、教授や准教授の企業との個人的縁故による、教授推薦とも言える就職活動も存在する。
学校推薦はいわゆる学部や学科ではなく、大学院の研究科や専攻に対して出されるものが多い。そのため、学部生で学校推薦による就職を希望する場合、院生が希望の推薦を取得した後に残った推薦が割り振られることが多い。学校推薦方式は、企業にとっては一定の専門知識と研究の経験を持つ学生を安定して確保でき、学生にとっては就職活動に過大な労力と時間を割く必要がなく大学・大学院での研究の経験を生かした就職ができるなど、双方にとって効率の良いシステムといえる。
学校推薦によって得た内々定は自由応募で得た内々定のように軽々しく断ることができない。学校推薦による就職活動は、大学と企業のある種の信頼関係によって成立しているため、一度成立した内々定を学生が一方的に反故にすることは、大学と企業の信頼関係を傷つけることとなり、以降の同学の学生に多大な迷惑をかける可能性があるためである。
バブル崩壊以前は、大手・中堅企業がいわゆる難関大学の学生に対して就職説明会と称した接待紛いの囲い込み活動を行い、採用試験も一瞬(15分程度の雑談交じりの面接一回)にして完了することが多かった。しかし、バブル崩壊後、新人教育を行う余裕のない企業が増え、さらに、入社後の比較的短い期間での離職率の増加という現象が起きはじめた。そのため、近年では推薦の前準備として、学生が有する気質や能力が企業の求める人材像にどの程度一致しているかを測るジョブマッチングを取り入れる企業が増え始めた。ジョブマッチング導入によって、大学時代に極めて応用的な研究を行っていた学生は以前にも増して有利な就職活動を行える状況となったが、理学研究を行っていた学生や工学でも理論系の基礎研究を行っていた学生は中々マッチングが成立せず、就職活動に頓挫してしまう傾向が以前より強くなっている。また、就職活動期には研究室に配属されていない(されていたとしても極短い時間しかたっていない)学部生に関しては、企業側から見るとマッチングを成立させるための対象が定かでないため、学部生の学校推薦による就職活動は難しくなっている。
近年ではジョブマッチングを複数回行う企業や、リクルーターによる面接を行う企業も増えおり、学校推薦を得るための労力が自由応募による就職活動の労力と変わらない状態になっていることもある。そのため、学校推薦とは名ばかりの、断ることのできない自由応募、となっている学校推薦を行う企業も増えている。
なお、バブル崩壊以前には頻繁に行われていた大手企業による学生の囲い込み活動も近年では規模、件数ともに減少傾向にある。
失業者やフリーター・公務員浪人の就職活動
(勤務先の経営悪化による倒産やリストラを含む)失業者(離職者、求職者)やフリーターは、通常ハローワークに登録し、就職や職業訓練の斡旋を受けることができる。職業訓練を受ける場合は、入所した職業訓練施設(離職者訓練を実施する職業能力開発校や職業能力開発促進センターなど)から訓練内容に関連した就職の斡旋や就職相談(キャリア・コンサルティング)を受けることができる。
フリーターという言葉が生まれたバブル期には、「定職に就けるのにあえて就かず好きなことをする」という本意的な意味合いで用いられてきたが、今は学校を卒業しても職に就けず、不本意にフリーターになるという事例が少なくないため、不本意的な意味合いで使われることが多い。そう使われる要因の1つが、企業はフリーターを良くて技能・経験不足、悪いと厄介者視するという現実がある。そのため、フリーターや無業者の就職活動は、たとえ職業訓練を受けたとしても、学校等のサポートがある新卒者よりも、一層厳しいといえる。
フリーターへの意識に関しては、厚生労働省が2004年にまとめた雇用管理調査[4]に顕著であり、採否に影響しないと答えた企業経営者や人事担当者が大半だったものの、フリーター経験を好意的に捉えて、豊富な経験やチャレンジ精神・他業種で培った技能を評価して採用するとした者は3.6%しかいなかった。その一方で、フリーターというスタイルに嫌疑的な反応を示して不採用にするとした者が30.3%にも上り、「簡単に辞める傾向がある(否定的に答えたグループの7割)」や「責任感がない(同5割)」といった、長期就業に疑問を抱いたり、リーダーシップの欠如を問題視する意見も聞かれる。
さらに、「3年以上は同じ職場を経験しないと、必要な能力は一通り育たない」(大手企業中心)、「倒産や廃業がない限り、一生同じ会社で過ごすべき」、「現役(つまり、在学時)で就職を決定するべき」(地元中小企業中心)という概念を持つ者もおり、アルバイトしか経験していないケースでは、マイナス評価に成っても好意的に見られないケースが後を絶たない。多くの企業における「実務経験者のみ(または○年以上、優遇など)」や「リストラ解雇者のみ(または優遇など)」という過剰な求人対象の限定は、しかるべき企業で長期就業経験が積めなかった求職者たちにとっては超えることのできない絶壁であり、経験を積むことさえ許されないという現状がフリーター減少につながらない背景として根付いている。
なお、企業側の長期不況による経費削減の影響もあり、フリーターを単純な労働力としてしか見なしていない雇用者も存在する。その影響から、フリーターはすぐ辞めるからという理由で就労教育がなおざりであるケースも散見される。このような職場環境では、フリーター自身にも何ら技能が身に付かない状態に陥る。さらにフリーターの多くがやむを得ずフリーターになっていることもあり、仕事に現金収入以外の価値を見出せなくなる失速現象を起こしていると思われる節もある。これはパートタイマーなどの臨時雇用者にもたびたび見られる現象だが、雇用者と労働者の間に溝が出来た結果、労働意欲や責任感を削がれた労働者が量産されている構図も見受けられる。
また、公務員浪人の就職活動に関しては、フリーター同様厳しい状態にある。公務員試験は本来就職試験であり、民間企業採用試験とは遜色がないと言える。しかし、試験期間は民間企業採用試験と異なり、原則5月から10月に集中していることから、その期間を中心に民間企業への就職活動は休止せざるを得ない環境にある[5]。大学入学時など、学校入学即試験勉強開始という学生・生徒も多いことから、資格取得を含めて遅れを取ってしまう場合があり、浪人後に各種資格を慌てて取得、民間企業を受けても、学生時代に資格を取得していなかったことを理由に不採用になることが多い。さらに、受験資格さえあれば誰でも合格のチャンスがあるため、企業側が「受験可能年齢上限まで受ける」という印象を持たれて不採用になることも多い。そして2001年には追い打ちをかけるように、文部科学省が公務員浪人で卒業を迎える者を新卒就職希望者の対象から外しても良いという通達を出したため、公務員浪人をフリーターと同じく、事実上ニートとして扱うことで、書類選考で即不採用にして面接すら受けさせない企業も目立つようになっている[1]。このため、一度公務員浪人になってしまうと、フリーター同様抜け出すことは非常に難しく、受験者側の民間企業との掛け持ちによる進路変更や採用者側の公務員浪人に対する採用への考え方の見直しが求められる。
ただ、行政側もフリーターに対する就業支援のための政策として、ジョブ・カード制度や基金訓練を実施しており、そこでの就職を企業側にも促しているが、これは社会保険をかけて雇用することになり、人件費増大にも関わることから、これらを使って雇用する動きはわずかである。